初めてスイスを訪れるなら、ケーブルカーや登山鉄道を使って山の上まで行き、絶景を楽しむのももちろんおすすめ。
でも、せっかくスイスまで来たなら、私はぜひ一度、自分の足でアルプスを歩いてみてほしいと思います。
街から歩き始めて、森の中を抜け、小さな沢や農場を通り、少しずつ標高を上げていく。
振り返ると、さっきまでいた街が小さくなっていて、目の前には山や湖が広がっている。
そして何時間も歩いた先で、氷河やアルプスの山々が突然目の前に現れる。
私がスイスで好きだったのは、単に「絶景を見る」ことではなく、その景色の中に自分の足で入っていく感覚でした。
今回は、私がスイス滞在中に実際に歩いた中から、初めてスイスを訪れる人にもおすすめしたい7つのハイキングを紹介します。
有名な観光地から比較的静かなエリアまで、それぞれ違った魅力があります。
トレイル一覧
| トレイル | レベル | 距離 | のぼり | 目安時間 | おすすめポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| オエシネン湖 (Oeschinensee) | ★★☆☆☆ | 12.4 km | 459 m | 3時間 | 絶景スポットをおさえつつ、のんびりハイキング |
| アレッチ氷河 (Aletsch Glacier) | ★★☆☆☆ | 13.3 km | 414 m | 3時間半 | アルプス最大の氷河のダイナミックな風景とヴァレー地方の渓谷を楽しむ |
| シュトース (Stoos) | ★★☆☆☆ | 13.8 km | 946 m | 5時間 | スイス中央エリア・ルツェルン湖の景色を眺めながら稜線歩き |
| トゥレン (Turren) 〜ブリエンツァー・ロートホルン (Brienzer Rothorn) | ★★★☆☆ | 9.5 km | 1,092 m | 3時間半 | ブリエンツ湖の絶景スポットまで静かなトレイルを歩く |
| フィルスト (First) 〜シーニゲ・プラッテ (Schynige Platte) | ★★★☆☆ | 17.6 km | 793 m | 6時間 | スイスの絶景が詰まった贅沢なルートと山小屋体験 |
| グリンデルワルト (Grindelwald)〜アイガー・グレッチャー (Eigergletscher) | ★★★☆☆ | 14.1 km | 1,580 m | 5時間半 | アイガーを間近に眺めながら王道のアルプスらしい景色を楽しむ |
| ツェルマット (Zermatt)〜ゴルナーグラート (Gornergrat) | ★★★☆☆ | 11.4 km | 1,408 m | 4時間 | マッターホルン、モンテ・ローザ、氷河を満喫する |
| レンク (Lenk) ・ヴィルトストルーベルヒュッテ (Wildstrubel Hütte) | ★★★★☆ | 19.7 km | 1,550 m | 8時間 | 観光地では味わえない、ローカルな登山と山小屋体験 |

1. オエシネン湖 (Oeschinensee)|スイスらしい絶景をのんびり楽しむ
こんな人におすすめ: 絶景を楽しみながら、比較的のんびり歩きたい人
レベル: ★★☆☆☆
距離: 12.4 km (Kanderstegまで歩いた場合)
のぼり: 459 m
目安時間: 3時間
「スイスの絶景」と聞いて、多くの人が思い浮かべるような景色。
それがオエシネン湖です。
エメラルドブルーに近い美しい湖と、その背後にそびえる大きな山々。
写真で見たことがある人も多いと思いますが、実際に行ってみてもやっぱりきれい。
「これは有名になるよね」と納得してしまう景色でした。
オエシネン湖周辺は、比較的のんびり楽しめるハイキングコース。
湖の周辺では、急いで次の場所へ移動する必要はありません。
ベンチに座って景色を眺めたり、ランチを食べたり。
こういう「何もしない時間」も山では大切だなと思います。
難しいハイキングではなくても、記憶に残る山歩きはできる。
オエシネン湖は、そんなことを感じさせてくれる場所でした。
また、もし時間と体力に余裕があるなら、カンデルシュテーク (Kandersteg) から歩くルートをおすすめします。

2. アレッチ氷河 (Aletsch Glacier)|スイスアルプスのスケールを感じる
こんな人におすすめ: 氷河や高山のダイナミックな景色を楽しみたい人
レベル: ★★☆☆☆
距離: 13.3 km
のぼり: 414 m
目安時間: 3時間半
スイスで見た中でも、特に息をのんだ景色のひとつがアレッチ氷河。
ヨーロッパ最大の氷河ともいわれる、圧倒的なスケールの氷河です。
私はベットマーホルン (Bettmerhorn) からスタートして、氷河を眺めながら歩きました。
特に印象に残ったのが、氷河と周囲の山々とのつながりが見えること。
反対側から見るメンヒ (Mönch) も印象的で、「この山々から氷河が流れてきているんだ」と、地図で見るよりもずっとリアルに感じることができました。
途中メルイェレン湖 (Märjelensee) を通って、その後は谷側をUターンしていきます。
高い場所から見る氷河の迫力とはまた違って、谷を戻っていく道は比較的穏やか。
この一日の中で、いろいろな表情のスイスを見ることができました。
そして、アレッチ氷河周辺で感じたもうひとつの魅力が、ベルナー・オーバーラントエリアとは違うスイスの表情が見られたこと。
グリンデルワルトやインターラーケン周辺は、日本人を含め観光客にも非常に人気のエリア。
一方で、ヴァレー地方まで足を延ばすと、少し違ったアルプスの景色に出会えます。
スイスに少し長く滞在するなら、ぜひ有名エリアの外にも足を延ばしてみてほしいです。

3. シュトース(Stoos)|絶景観光を「ちゃんとしたハイキング」に
こんな人におすすめ: 稜線歩きが好きな人、中央スイスエリアでハイキングしたい人
レベル: ★★☆☆☆
距離: 13.8 km
のぼり: 946 m
目安時間: 5時間
シュトース・リッジは、スイスでもかなり人気のハイキングルート。
特に有名なのが、クリンゲンシュトック (Klingenstock) からフロナルプシュトック (Fronalpstock)までの稜線歩きです。
リフトで両方の山頂付近まで上がることができるので、多くの観光客は上までリフトで行き、稜線を歩いて、またリフトで下ります。
もちろん、それでも十分に素晴らしい景色を楽しめます。
でも、私ならもう少し歩いてみたい。
実は、シュトースからスタートして、最後もシュトースに戻ってくる周回ルートにすることもできます。
そうすると、単なる「絶景スポット巡り」ではなく、ちゃんと一日のハイキングとして楽しめます。
稜線を歩いている間は、常に景色が開けています。
眼下にはルツェルン湖。
その周囲には山々が連なっていて、歩く方向によって少しずつ見え方が変わります。
また、スイスの中央部に位置していることもあって、グリンデルワルト周辺とはまた違った山の景色を見ることができます。
有名な観光地でも、少し歩き方を変えるだけで、体験そのものが変わる。
シュトースはそんなことを感じた場所でした。

4. トゥレン (Turren) 〜ブリエンツァー・ロートホルン (Brienzer Rothorn)|観光列車ではなく、自分の足で
こんな人におすすめ: 少し静かなルートを歩きたい人、ブリエンツ湖を違った角度から眺めたい人
レベル: ★★★☆☆
距離: 9.5 km
のぼり: 1,092 m
目安時間: 3時間半
ブリエンツァー・ロートホルンといえば、有名なのが山頂まで走る蒸気機関車。
スイスらしい景色の中を列車で登っていく、人気の観光体験です。
ですが、このエリアにもたくさんのハイキングルートがあり、レベルによって様々なルートから歩いて登ることが可能です。
私はトゥレンという場所からブリエンツァー・ロートホルンを目指しました。
観光客が多いルートとは少し離れているので、比較的静かな山歩きを楽しめます。
途中では地元の農場を通り、稜線のような場所を歩きながら少しずつ高度を上げていきます。
そして上から見るブリエンツ湖。
ブリエンツ湖は、湖そのものの美しい色でも有名ですが、山の上から眺めるとまた全然違って見えます。
もちろん、登山鉄道に乗って山頂まで行くのも一つの体験としておすすめできます。
ただ、ハイキングが好きなら、「観光地に行く」のではなく「観光地まで歩いていく」ことで、少し違った体験になると思います。
※登山鉄道は運行本数が限られており、ハイシーズンには大変混雑するため、事前の予約なしでは搭乗できない場合があります。利用する場合は、事前に最新の時刻表や予約情報を確認しておくのがおすすめです。

5. フィルスト (First) 〜シーニゲ・プラッテ (Schynige Platte)|私がスイスで一番好きだったハイキング
こんな人におすすめ: スイスらしい景色を一日かけてたっぷり楽しみたい人
レベル: ★★★☆☆
距離: 17.6 km
のぼり: 793 m
目安時間: 6時間
今回紹介する中で、私が一番おすすめしたいのがこのルートです。
フィルストからシーニゲ・プラッテまでのハイキング。
このルートが好きなのは、とにかく景色の変化が多いこと。
まずは有名なバッハアルプゼー (Bachalpsee) 。

その後、来た道を戻るのではなく、そのままファウルホルン (Faulhorn) 方向へのぼっていきます。
のぼりきったところで稜線が現れ、左側に山々、右側にブリエンツ湖を望みながら、その間を歩いていきます。
私はこの日、ベルハウス・メンドレネン(Berghaus Männdlenen)という山小屋に一泊することにしました。

スイスの典型的な山小屋に泊まり、山の中で一夜を過ごす。
そして翌朝、山の上から見る朝日。
これは本当に忘れられない経験になりました。

ここからシーニゲ・プラッテまでの道では、一部残雪が残っていて、雪の上を歩くちょっとした冒険もありました。
小さな谷を越え、さらに進んでいくと、今度は景色が大きく開けます。
そして目の前に現れるのが、ユングフラウ三山ーアイガー (Eiger)、メンヒ (Mönch)、ユングフラウ (Jungfrau)。
さらにその右側にはブリエンツ湖、インターラーケン。
「スイスに来てよかった」と思わず感じてしまうような景色でした。
スイスで一つだけハイキングを選ぶなら、私はこのルートをおすすめします。

6. グリンデルワルト (Grindelwald)〜アイガー・グレッチャー (Eigergletscher)|アイガーに向かって歩く
こんな人におすすめ: スイスらしいアルプスの景色を歩きながら楽しみたい人
レベル: ★★★☆☆
距離: 14.1 km
のぼり: 1,580 m
目安時間: 5時間半
グリンデルワルトといえば、スイスを代表する山岳リゾートのひとつ。
街に到着した瞬間から、目の前に大きな山々がそびえていて、「これぞスイス」という景色が広がっています。
そんなグリンデルワルトから、私はアイガー・グレッチャー方面へ歩いてみました。
もちろん、グリンデルワルトからロープウェイなどを使って一気に上まで行くこともできます。
でも、私は街から歩いていくことをおすすめしたいです。
最初は森の中を歩き、小さな沢を渡ったりしながら、少しずつ標高を上げていきます。
そして歩いているうちに、アイガーがどんどん近くなってくる。
最初から絶景がドーンと現れるのではなく、歩くにつれて少しずつ山との距離が縮まっていく感じが、とてもよかったです。
そして最後に待っているのが、迫力のある氷河の景色。

何時間かけて自分の足で登ってきたからこそ、その景色がより特別に感じられました。
ロープウェイで下から一気に上がって景色を見るのももちろん楽しいけど、
「あそこまで自分で歩いてきた」
という感覚は、ハイキングならでは。
初めてスイスのアルプスを歩くなら、ぜひ候補に入れてほしいルートです。

7. ツェルマット (Zermatt)〜ゴルナーグラート (Gornergrat)|予定変更が最高の選択になった日
こんな人におすすめ: マッターホルンをいろいろな角度から眺めたい人、しっかり歩いて標高を上げたい人
レベル: ★★★☆☆
距離: 11.4 km
のぼり: 1,408 m
目安時間: 4時間
スイス滞在の最後に、ツェルマット周辺でもう一度ハイキングをしたいと思っていました。
もともとの予定は、5つの湖を巡る「5 Lakes Hike」からゴルナーグラートへ向かうルート。
ところが、その日はスネガ (Sunnegga) 方面へ向かうケーブルカーが運休。
予定が完全に崩れてしまいました。
そこで急遽予定を変更して、ツェルマットからリッフェルアルプ (Riffelalp) を経由して、ゴルナーグラートまで歩いて登ることに。
そして結果的に、この変更が大正解でした。
ツェルマット周辺は、スイスの中でも特に観光客が多いエリア。
でも、ツェルマットを出て歩き始めると、意外と静か。
最初は森の中をジグザグに登っていきます。
歩いているうちに、少しずつマッターホルンが近づいてくる。
リッフェルアルプまで来ると、観光客もかなり増えてきます。
そこからさらにリッフェルベルク (Riffelberg) 方面へ登っていくと、徐々に視界が開けてきます。
マッターホルンと、その周囲の山々がどんどん大きく見えてくる。
ゴルナーグラートから下りてくる人たちとすれ違いながら、さらに上を目指します。
途中で立ち寄ったリッフェル湖では、あの有名な「湖に映る逆さマッターホルン」を見ることもできます。

でも、私が一番驚いたのはマッターホルンではありませんでした。
モンテ・ローザと、その巨大な氷河です。

ゴルナーグラートへ向かって歩いていると、横にモンテ・ローザと氷河がどんどん大きく見えてくる。
その迫力に、本当に圧倒されました。
結果的に、最初に予定していた5つの湖ハイキングではなく、ツェルマットからゴルナーグラートまで歩くことになった。
でも、この日ばかりは、
「予定が変わってくれてよかった」
と思いました。
山では、計画通りにいかないこともある。
でも、そのときに別のルートを選んでみると、思いがけない景色に出会えることもあります。

おまけ:レンク (Lenk) ・ヴィルトストルーベルヒュッテ (Wildstrubel Hütte)
こんな人におすすめ: 有名な観光地を避けて静かな山歩きを楽しみたい人、よりローカルな登山や山小屋の雰囲気を体験したい人
レベル: ★★★★☆
距離: 19.7 km
のぼり: 1,550 m
目安時間: 8時間
今回紹介した7つほど有名な観光地ではありませんが、私がスイスで歩いた中でも特に印象に残っているのが、滞在していたLenkでのWildstrubel Hütteへのハイキングです。
グリンデルワルトやツェルマットのような人気エリアと比べると、歩いている人が圧倒的に少ない。
でも、景色は決して負けていません。
むしろ、
「こんなにきれいなのに、こんなに人が少ないんだ」
と思ったほど。
静かな山道を歩きながら、周りの景色をゆっくり楽しむことができます。
そして、このルートのもうひとつの魅力が山小屋に泊まれること。
山の中にある山小屋を目指して歩き、そこで一晩過ごす。
ホテルに泊まって日帰りで山へ行くのとは違って、少しだけ「山の中で暮らす」ような感覚があります。
山小屋では、同じように山を歩いてきた人たちと自然に会話が生まれることも。
有名な観光地を巡るだけではなく、少し観光ルートから外れてみる。
そうすると、もっとローカルなスイスの山と、山を愛する人たちのコミュニティに触れられる気がします。
ここでの日の出も忘れられない風景の一つです。

下山では、レツリー・グレチャーゼーリ(Rezligletscherseeli)の湖を通って、ジンメン滝(Simmenfälle)側へ下りました。
このルートも上りとはまた違った景色を楽しめます。

初めてのスイス旅行で絶対に行くべき場所、というわけではありません。
でも、少し長く滞在するなら、私はこういう場所にもぜひ足を延ばしてみてほしいと思います。
「有名だから行く」ではなく、「歩きたいから行く」。
そんな山旅をしたい人には、特におすすめしたいルートです。
まとめ|スイスの山を見るより、スイスの山を歩く
今回紹介した7つのトレイルは、それぞれ違った魅力があります。
また、スイスではロープウェイや鉄道が発達しているため、誰でも簡単にアクセスできる絶景スポットがたくさんあります。
でも、私がスイスで一番好きだったのは、街から歩き始めて、森を抜け、農場を通り、少しずつ標高を上げていく時間でした。
何時間も歩いた先で氷河や山々が目の前に現れたとき、「ここまで自分の足で来た」と思える。
その感覚は、展望台から見る景色とは少し違います。
もちろん、有名な観光地も素晴らしい。
でも、もしスイスに少し長く滞在できるなら、ぜひ一日くらいは「観光する日」ではなく、「山を歩く日」を作ってみてほしいです。
歩いて、山の中で過ごして、できれば山小屋にも泊まってみる。
そうすると、観光で見るスイスとは少し違った、自分だけのスイスの山旅が見えてくると思います。
私自身、まだアッペンツェル・アルプスやスイス東部など、歩いてみたい場所がたくさん残っています。
また次の山を歩きに、スイスへ戻ってきたいと思います。
※ハイキングについて
山の天候や積雪、登山道の状況、ロープウェイ・鉄道の運行状況、山小屋の営業状況などは季節によって変わります。実際に歩く際は、出発前に必ず最新の情報を確認し、自分の経験や当日のコンディションに合ったルートを選んでください。

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